こんにちは。
「自分、料理しないんで」でおなじみJ君です。
料理ってどの作業からがスタートで、ゴールはどこなのか、皆さん考えたことはありますか?
スーパーでお買い物の時点でスタート、という人もいれば、
まな板の上で今から切ります!がスタートというご意見もあると思います。
(ちなみにJ君は「レンジでチンするところ」がスタート地点です)
今回行ってきたのは、滋賀県高島市にある「鳥居楼」。
オーナーは仰いました。
「料理は、まな板に乗る時にはほとんど終わってる」
??
J君はこの意味がよくわからなかった。
しかし話を聞くうちに、オーナーの考え方にさすがのJ君も感動したので、
今回ぜひ紹介したい!という事で記事にしました。
まずこの鳥居楼さん、関西では有名な軍鶏(シャモ)料理のお店なんです。
そもそも軍鶏とは、闘鶏用、観賞用、食肉用を兼ねるニワトリの品種。娯楽の少なかった昔は、軍鶏を戦わせて、負けた方を食べるという習慣もあったそう。
この軍鶏をどこから仕入れているかというと……
自家養鶏なんです。鳥居楼さんの。
オーナー自ら育ててるんですって。
ということは、この軍鶏料理に関しては「卵をかえすところから料理スタート」?
いいえ、個体と個体を掛け合わせるところ……すなわち
命を生み出すところから、もう料理は始まっているんです。
どのオスとメスを掛け合わせたら、おいしい個体が生まれるのかを日々研究、試行錯誤。
また個体によって旬も違うとのこと。
「このメスは今日あたりが旬だから、今日の宿泊者に出そう」とかそういう感じらしい。
ということは捌きたての軍鶏を出してるってことでOK?YES!
捌きたての軍鶏食べた事ある?いや~意外と今もう無いんじゃないかな!
そもそも、なんで養鶏を始めたの?って聞くと、
「もう近所で軍鶏売ってる所なかったから」だってさ。
だからって個人でやり始める!?って思ったよね。
このオーナー、よそとなんかベクトルが違う。
よくよく話を聞いていくと、
「仕入れという行為の概念」が違うことが判明。
例えばお肉の仕入れって、まあ市場とかで買い付けたりお肉屋さんに注文したりだと思うんですけど、
鳥居楼さんは猟師から直電らしい。
ぼたん鍋の猪肉や脂身の部分がおいしい、金太郎鍋の熊肉、琵琶湖の冬の贅沢品・真鴨の肉を仕入れるにしても、
猟師さんの時点で「この個体は脂ののりやサイズがアレやから、鳥居さん買わんやろ」と判断したらまず電話はかかってこない。
で、やっと猟師さんの判断で電話がかかってきたら、捌いて肉にする前に、どんな個体か鳥居さんが確認しに走る!
そしてまず銃弾の種類(散弾銃かライフルか)を確認し、弾がどの角度で入っているかなどを確認。
(銃弾がどの角度で入っているか?見る?仕入れで?とJ君は思っているが、後に聞いたところ、銃弾の種類によって玉の軌道が違うので、肉の損傷や状態が千差万別とのこと。深ぇ~)
「これは銃弾の軌道が右から入って背骨に当たって砕けているから、最高の個体だけど左半分しか買わん」など、
個体によって買う、買わないの判断をし、自分で捌いて持ち帰り、猪や熊の肉は成型する。
その成型の出来栄えの美しいこと!!!!
ぼたん鍋の肉の線や丸模様もすべて計算……こんな美しい盛りは、成型から計算してないとちょっと無理だと思う。神業です。
最後に、鳥居さんの京都での修業時代のエピソードを紹介。
若き鳥居青年は、一人冬の京都でふと「地元の真鴨が喰いたいぜ……」と思い、
実家に「送って♡」と連絡。程なくして届いた鴨を引っ提げ、同僚の皆にふるまおうと、ルンルンで職場である板場へ出勤。
「鴨あるで食おや~」と真鴨を取り出したところ、同僚たちは騒然。
「お、おま……羽付いとるやないけ……!」
鳥居青年はキョトン。そして気づいたそうです。
普通は「肉」になった状態で仕入れているんだということを。
板場でも「生き物」の状態から調理しないんだ、ということを。
でも鳥居さん曰く、「この肉がうまいのかどうかなんて、肉になる前の現物見ずに判断なんかでけへん」とのこと。最高の素材は仕入れの運ではなく、自分で判断して掴みに行くべし、と…。
この記事を読んでくれた人は、もし鳥居楼さんに行ったら、どの料理でも良いから感じて欲しい。
軍鶏は、自家養鶏のこだわりぬいた素材が、食べる寸前に捌かれている、という事実を。
ぼたんや熊は、銃弾の軌道から確認して仕入れ、美しく成型された、完全天然物であるということを。
でも鳥居さん本人は言います。
「こんなん普通やで?」
んなわけあるかい!!
カッケェ~……